プロジェクトストーリーB+ シューティングマシン

B+ シューティングマシン

シュート力の向上で
日本のバスケットボール界を強化する

バスケットボールの普及には、日本のバスケが強いことが不可欠。強くなるためのポイントの一つがシュート力の向上でした。そこでB+(ビー・プラス)で新たに「シューティングマシン」の開発をスタート。今のような製品に仕上がるまでには性能・デザインともに多くの紆余曲折がありました。

B+
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「もっと強い日本を、バスケがあふれる風景を」をコンセプトに、スポーツ用品事業の新規プロジェクトとしてスタート。バスケットボールの普及と強化に貢献するため、バスケ環境を整備する事業を行っています。

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プロジェクトストーリー「普及」と「強化」の視点で、バスケ環境を捉え直す

相田 靖之AIDA YASUYUKI

スポーツ用品事業 技術開発統括部 グループリーダー

1993年
モルテンに入社。広島工場でボール商品開発部に配属。
2012年
開発グループの課長に就任。
2014年
品質保証部、品証グループのグループリーダーに就任。
2016年
技術開発部、開発グループの課長に就任。
~現在
B+のシューティングマシンの開発リーダーを兼務。

ストーリーのアウトライン

2018年10月、モルテンのスポーツ用品事業の新規事業「B+(ビー・プラス)」をスタート。第一弾として「ゲームユニット」のレンタルと販売を始め、第二弾として「シューティングマシン」を開発した。「シューティングマシン」とは、「一人でもたくさんのシュートを効率的に打てる」、「一人でも多彩なシュート練習ができる」を追究したシュート練習器具。

エピソード 01

プレイヤーの技術力向上に貢献したい

きっかけは、社内で選抜された社員が1年をかけて取り組む戦略研修です。この研修から、新規ビジネスB+事業が生まれた経緯は紹介されている通りですが、B+の活動を進めていく中で、日本のバスケットボールの「シュート成功率の低さ」という課題に気がつきました。また、大会によって成功率にバラツキがあることにも注目しました。例えば、2019年のFIBAバスケットボールワールドカップのアジア予選での成功率は悪くないのに、本戦では、出場国中ほぼ最下位のレベルに甘んじています。バスケットボールは、体格がモノを言う競技とはいえ、アメリカなどの強豪国と比べて、クイックネスやシュート以外のスキルで大きく劣っているわけではありません。ならば、まずなすべきは、シュート力向上だろうと推察し我々が何か貢献できることがあるのでは、という探究が始まりでした。

なぜシュートの成功率が低いのか?

圧倒的にシュート練習が不足していると考えました。アメリカだと、体育館や街中にゴールがあって、シュート練習ができる環境が整っている。1日に何百本というシュート練習をやろうと思えばできるわけです。この環境の違いに加え、日本ではチーム練習が重要視されていて、シュート練習は日に数十本程度というのがザラです。さらに、できるだけ多くのシュート練習しようと思うと、シュートを打つ人、ボールを拾って投げる人という2人組でやる必要がありますが、これだと、結局一人当たりのシュート本数はなかなか増えません。

このジレンマを解消するために考えたのが、「シューティングマシン」です。一人でも効率的なシュート練習ができる。誰にも遠慮することなく納得いくまでシュートを打ち続けることができる。漫画『スラムダンク』に、主人公が仲間たちと「2万本シュート練習」を行うシーンがありますが、あれが一人でできるんです。

「シューティングマシン?」こんなものが売れるのか。

「こんなものが売れるのか?」これが最初にシューティングマシンの構想を聞いた時の正直な感想でした。でも調べてみると、アメリカからの輸入品だったり、野球のピッチングマシンのメーカーがつくっていたりと、あるにはあるんです。一方で、アメリカではどこの体育館にも、どのクラブチームにも当たり前のようにシューティングマシンがあることもわかりました。
考えてみると、野球のバッティング練習用のピッチングマシンも昔はプロや大学、高校の強豪校くらいにしかありませんでしたが、今はごく普通の高校の野球部にもあります。これと同じようにできるんじゃないか、そしてそれは間違いなくバスケットボールの「強化」につながるはずだ、というイメージが湧いてきました。

スポーツは強くないと注目してもらえない。

野球もサッカーも、日本が強いからみんな関心を持ちます。八村選手のような世界に通用するプレイヤーが出てきたとはいえ、バスケットボールへの関心度はまだまだ。Bリーグも始まりましたので、もっとバスケットボールの人気を高めたい。そのためには強い日本であることが必要で、そのカギとなるシュート力強化に、必ずモルテンのシューティングマシンが貢献できると考えています。

エピソード 02

足りないノウハウは社外から取り入れ学ぶ

性能、デザイン、コストのバランスが最も苦労した点

「シューティングマシン完成までの道のりは平坦なものではなかった」どころの話ではありません。シューティングマシンに必要な金属材料技術、モーター制御でモノを回転させる技術、バネでモノを打ち出す技術などに関して、社内にはノウハウがほとんどないのですから。当初は、開発はすべて社内のリソースだけでやろうとしていたのですが、外部の専門家の方に協力いただくことにしました。その方は、ロボットエンジニアであり競技者用義足の研究開発、義足アスリートの育成をされている株式会社Xiborgの遠藤氏です。モーター制御の部分はすべてこの方にお任せすることになりましたが、外部の専門家との協業は非常に貴重な経験でした。まず、モルテンにない高度な、しかも信頼性の高いノウハウを活用できるため、開発にかかる時間を大幅に短縮できます。次に「そういう観点もあるのか」という学び。手法の違いに戸惑いながらも、私にとっても、開発のメンバーにとっても、これが実に大きかった。こんな風に、外部の専門家、リソースを積極的に活用するということも、今回のプロジェクトの特徴だと言えます。

マシンのデザインも、外部の専門家の協力を得ています。株式会社exiii designの小西氏にお願いしました。カッコいいデザインであればあるほど、内部構造の面で制約ができたり、その結果として必要な機能を満足できなかったり、あるいはコスト高になったりと、あちらを立てればこちらが立たずといった感じで、何度もすり合わせを行い、修正を繰り返しました。デザインの面で妥協したくない、一方でいかに求められる性能を満足させ、かつコストを抑えるか。性能、デザイン、コストを高次元でバランスさせよと言われますが、これらはトレードオフの関係にあるため実に難しく、私たちが最も苦労した点でした。

エピソード 03

成功のカギは社内のチーム力

試行錯誤はメンバーとともに

私は開発のリーダーという立場でしたが、設計するメンバーに説明しようにもノウハウがなく、もちろんメンバーにもノウハウがなく、誰に聞いてもわからない、という部分は苦労しました。メンバーのモチベーションが下がらないよう、メンバーの「こうしたい」「ああしたい」という思いをできるだけ通せるように腐心しました。もちろん、失敗はいくつもありましたが、前向きなチャレンジは大いに歓迎しました。

節目節目で関係する部署、メンバーとのコミュニケーションをとることも重要でした。性能、デザイン、コストのバランスを取るという話をしましたが、それらをすべて総合的に見ることができるのが自分なので、費用がこのくらいなら機能やデザインはここまでになる、このくらいの機能であれば予算はこのくらいかかってしまうということを提示して、メンバーたちと話をし、合意していきました。

エピソード 04

練習の質を高める製品を

今後は、反復練習のための道具ではなく、シュート練習の質を高めるような機能を追加できないかと考えています。例えば、どういうシュートが入って、どういうシュートが外れるのか、リングのどの方向へシュートがずれる傾向があるのかといったことが分析できると、シュート練習のやり方や質が変わってきますよね。シューティング理論を研究し、量と質の両面から、選手のシュート力向上に貢献していきます。

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