プロジェクトストーリーHM RACERS

HM RACERS

楽しさを追い求め、
未知へのチャレンジ

モルテンの大きな柱である自動車部品事業は、長く乗用車に使用される部品開発・製造を手がけていますが、2019年より、耐久レースに参加するチームとテクニカルパートナー契約を結び、レース車向けの部品開発、供給を行っています。そこから得られるノウハウは、乗用車の部品開発に役立つと考え、日々取り組んでいます。

HM RACERS
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2016年にはじまった広島マツダ・レーシングチーム「HM RACERS」。モルテンはテクニカルパートナーとして、勝利のための製品開発に関わっています。

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プロジェクトストーリー自動車部品事業のブランドステートメント体現への挑戦

近藤 教功KONDO NORIYOSHI

自動車部品事業 技術開発統括部 課長

1996年
モルテンに入社後、これまでゴム部品の設計・開発を担当。
タイ、中国の工場で新規部品の立ち上げに携わる。
2019年
レース用部品の開発担当リーダーを務める。

ストーリーのアウトライン

モルテンの自動車部品事業ではディビジョンブランドとして、“Fun and Functional”を掲げています。我々がつくった部品をレーシングチームHM RACERSに使ってもらえるなら、これほどのFunはないのではないかと考えています。自分たちが開発した部品の性能が実際のレースで試され、何らかの貢献ができると思うと、ワクワクしてきませんか。それが、Funを追い求めるということだと思います。

エピソード 01

レーシングカーの世界へチャレンジ

テクニカルパートナー契約とは、スポンサーとか単に部品を供給するというだけではなく、こちらからの提案に対して評価をしていただくという関係です。要するに、モルテンの部品を付けたら走りはこう変わるはずですよといったことに対し、先方から「狙い通りだ」とか「こういう点で不満だ」といった評価をしてもらう。つまり、文字通りパートナーとして、車の性能向上を追究し、彼らの勝利に貢献する、という間柄であるということです。

モルテンのノウハウをベースに開発

我々が提供しているのはラバーブッシュといって、サスペンションの一部として使用される部品です。人間でいうと関節に当たる部分ですね。タイヤと車体を車軸、サスペンションでつなぐのですが、そのつなぎ目のゴム製品がラバーブッシュです。
ご存知の通り、自動車は基本的に金属でできており、関節部分にゴム部品をつけることによって、路面から車体に伝わる衝撃や振動を吸収することができます。つまり、車の乗り心地を大きく左右する部品だといえます。もちろん、乗り心地でいえば、ボディ剛性とかサスペンションの設計の影響の方が大きいのですが、ラバーブッシュ一つで全く違う乗り味になるのも事実なんです。

乗用車とレース車両に求められる性能の違い

レース用の車は乗り心地は度外視して、速く走ること、スピードを最優先します。直進時の安定性はもちろんですが、コーナリングの時の車体の傾き(ロール)を抑えるために、いわゆる「固め」の足回りとなっています。だから、我々の提供するラバーブッシュも、硬度の高い材料を使用しているので一般の人が乗ると極めて乗り心地の悪い車になっていると思います。

レース車のノウハウは乗用車の部品開発に役に立つはず

レース車であっても乗用車であっても、いかにしてエンジンの力を効率的に路面に伝えるかという基本は同じです。また、ドライバーが意のままに車を操縦できるかという、ドライバビリティを高めるというのも同じで、レース車用の部品をつくることには、乗用車の部品を設計する際のヒントが多くあると考えています。
それぞれに求められる性能は異なり、部品に要求されるスペックも違いますが車の本質は同じはずです。かつて、ある自動車メーカーはF1レースで得た知見を、乗用車に見事に活かし、性能向上とブランドイメージアップを実現しました。レースで得られるノウハウは、必ず乗用車の部品開発に役立ちます。

エピソード 02

「数値」だけで語れない仕事のおもしろさ

印象に残っている出来事は、「数値ではない」という考え方ですかね。普段の仕事では、お客様とは数値やデータで話をすることがほとんどです。要求仕様を満たすためには、定量的にお互い合意することが必要なので、当然のことですが、レースの世界では、「硬い」、「いや柔らかい」、「ブレる」などといった感覚的な言葉でやりとりすることがメインになります。これらの言葉をいかに変換し、解釈し、先方の求める世界を実現するかということが苦労でもあり、新鮮でもありました。いただいた言葉をかみ砕いて、メンバーで共有して、方向性を考えていくことでしか、正解は得られないだろうなと思います。

これまでになかった発想で視野を広く持つ

また、ここまで極端なことをやったことがなかったので、頭を切り替えるのが難しかったです。普段つくっている部品は、乗り心地とか耐久性など、一定以上のものを保証するという大前提がありますが、レースは極端な話、「最大24時間持てばいいや」という世界です。どこかで知らず知らずブレーキをかけてしまって、踏み込めない部分があって。捨てるところは捨てる、焦点を絞るところは絞る、そういう割り切った部分が必要になってくる。でも、絞り込むためには勘所がわからないと話にならない。だから、視野を広く持つという意味で、レース用の部品を買ってきて研究したりして、「モルテンならばこうできるはず」というのにたどり着くというか、発想を切り替えるのに時間がかかりました。そしてそれはこれからも続いていくと思います。

エピソード 03

新しい挑戦を楽しめるメンバーとともに

自発的、能動的に「次にどうするべきか」を考えていく

このプロジェクトには、金型、設計、営業、品質保証など、30歳前後の若いメンバーを集めました。実際に部品を設計したり、つくったりというのはメンバーに任せ、私は、予算管理や株式会社広島マツダ様との調整など、マネジメントの部分に比重を置いています。車好きなメンバーをそろえましたが、経験値はそれほど重視しませんでした。自分たちがつくった部品でレースの順位が変わったり、仕事ぶりがすぐに結果に反映される中で、レースチームの方々の声を直接聞くということが、メンバーにとって貴重な経験となるはずです。自発的、能動的に「次にどうするべきか」を考えないとやっていけない。そういう場に、あえてメンバーを放り込むことを心がけていました。その経験が、普段の業務への向き合い方にも良い影響を与えてくれるのではないかと考えています。

クライアントからのフィードバックが力になる

今回のテクニカルパートナーというのは株式会社広島マツダ様にとっても初めての試みで、フィードバックをもらうことも、言葉で言うほど簡単ではありませんでした。こちらもどこまで提案していいかもわからず、自分たちの部品が原因でリタイヤしたらどうしようかという怖さもありました。ただ、最初のシーズンを終えて、我々にも確実に蓄積されるものがあって、提案できる空気になっています。ドライバーの方には「ブッシュの素材が違うだけで、内角のコーナリングに入った時のGのかかり方、ロールの変化がだいぶ変わった。ここまで変わるのかとびっくりした」と言われました。だからこれからどんどん攻めて、もっともっとレースでの成果につなげるようにしていきたいですね。

課題を通して成長できるメンバーとともに

今回の活動を通して私が目指したことは、一番は若いメンバーの成長です。もちろん、少しでも多くの部品を使ってもらえるようにしたい、他のチームの部品も手掛けたいというのはありますが、多くの若手が、自ら手を挙げて参加し、過程を楽しみながら結果を追い求める場をつくっていきたい。意欲のある人に、どんどん経験を積んでほしいです。

必要なのは、物事を突き詰めて考えることができ、諦めないこと。そういう情熱のある人と働きたいです。少々生意気でもいいんです。話すこと、やることに筋が通っていて、一生懸命に取り組めるかどうか。多少の失敗はつきもの。失敗から素直に学んで次に進んで行けるかどうかが大事ですね。そういう人に活躍の場を与えることができる会社でありたいと思っています。

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